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遠藤登記測量事務所 土地家屋調査士 遠藤幸保 の日記

共有物分割に係る分筆にはご注意を!

2015.04.03

2年前の個人事務所時代に受託して分筆したケースです。

持分が母親と長男の1/2ずつの共有物を道路の南側と北側の2筆に分筆するケースで、既に敷地の南側には長男の建物が、北側には母親の建物が建っていて、ほぼその建物の東西のラインに沿って、南側の土地は整形地に、北側の土地は旗竿地に分筆せざるを得ない状況にあり、依頼者のご希望も同様でした。

私が仕事をする上でいつも心掛けていることは「始めに、税金ありき!」で考えることです。
分筆登記や共有物分割による移転の登記はいつどのようにもできますが、その結果としての税金は大きく異なることがあります。

このケースの場合も、面積ではなく財産価値が1/2になるように分筆して、共有物分割による移転の登記をすれば、贈与税がかからないことは承知はしておりましたが、前述したように既に建物が建っていてその東西のラインに合せて分筆せざるを得ないという制約がありましたので、実際は面積比が南側対北側で3:2になり、財産価値は2:1になってしまいました。

知り合いの税理士の先生に、この状態で共有物分割による移転の登記を実行した場合の贈与税を試算していただいたところ、約600万円にものぼることが判明し、さすがに依頼者もこれだけの税金は払えないということで、共有物分割による移転の登記は保留し、南側の土地については公正証書遺言により母親の持分は相続により取得する方法を選択するよう助言しました。

それから2年が経過し、同じフロアで一緒に仕事をしている司法書士法人の代表社員の先生のところに母親と長男が相談に見えて、今の時点で共有物分割による移転の登記をしたいとの内容だったそうで、その先生は「相続時精算課税制度」を利用した分筆及び共有物分割を提案し、その方針で進めることになったというお話がありました。

「相続時精算課税制度」を選択すると、2500万円までは贈与税を支払うことはなく、これを超える部分について一律20%の贈与税を納めることになり、相続発生時にその贈与価格を相続財産に加算して相続税を計算することになります。
ただし、相続時に加算される贈与財産の評価は、相続開始時ではなく、その贈与時の価格によることになり、既に納付した贈与税額は相続税から差し引かれます。
この制度を受けられる要件は、原則として贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母から贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の子又は孫への贈与であることで、適用を受ける人はその選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、同制度を選択する旨の「選択届出書」を「贈与税の申告書」に添付して税務署に提出しなければなりません。
「相続時精算課税制度」の詳細はこちら→https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4103.htm

「相続時精算課税制度」を選択した場合の手続の進め方の概要は次のとおりです。
①既に分筆した土地を合筆又は分筆登記抹消する。→直近の分筆登記しか共有物の分割による移転の登記の適用がされないため。
②南側と北側の土地の財産価値が同一となるよう新たに分筆し、以前の分筆線も含めて3筆に分筆し直す。
③南側(1筆)と北側(2筆)の土地を共有物分割による移転の登記をする。(南側の土地は長男の単有、北側の土地は母親の単有になる。)→財産価値が同一なので贈与税は発生しない。
④北側2筆のうちの南側1筆の土地を母親から長男に贈与する。→「相続時精算課税制度」を選択するので、贈与税はかからず、相続発生時にその贈与価格を相続財産に加算して相続税を計算して支払えば良いことになります。

以上の手続きを踏むことによって、依頼者のご希望どおり、南側の土地は長男の単有に、北側の土地は母親の単有にすることができることがわかりました。

「相続時精算課税制度」を知らなかったために、依頼者にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、2年前の測量がそのまま生かせ、新たな分筆点も計算点で済ますことができるため、前回の分筆登記費用に若干の費用をプラスするだけで目的を達成できそうです。

「相続時精算課税制度」は税理士の分野ですから、知らなくても止むを得ない分野なのかもしれませんが、前述した司法書士法人の代表社員の先生はご存じであった訳で、調査士になって3年のキャリアと40年のキャリアの格の違いを思い知らされた案件でした。

ただし、「相続時精算課税制度」を選択することによって、贈与財産は相続時に小規模宅地等の特例が受けられない等のデメリットもありますから、この制度を選択する場合税理士の先生と良く相談して、トータルな観点から判断する方が無難であることを申し添えておきます。

「相続時精算課税制度」のメリット・デメリット→http://allabout.co.jp/gm/gc/10913/2/
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土地家屋調査士法人 山口事務所 →http://endo.han-jo.jp/


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